研究会ブログ
講演レポート2023.06.13
2022年マスター認証講演 〜森谷 聡先生(メロディ矯正歯科)
1996年4月、Greenfield先生の特別研修会(レベルⅡ)を受講しました。
「98.5%Non-Extraction」や「過去20年間、外科処置を一切行わない非抜歯による治療率98.5%」等、少し前から怪しい数字だけが独り歩きしている感は否めないものの、症例集やパンフレットを見ると、臼歯関係がclassⅡだった症例が、小臼歯を抜かずにclassⅠになって治っている。
しかも初診時と歯列の形状が違っていて、丸くて何となく安定感があるような・・・
一体どんなことをしているのだろう。
4カ月後に開業を控えた自分には、3日間で25万円程のコースは、痛い出費でしたが、興味を抑えることができず、とりあえず、装置だけを学んで、使えそうもなければ、続けないつもりで受講しました。
初めて触ったLip bumperや初めて見たACCO、使ってはいたけど不得意なPalatal barの調整の仕方等々、軽い気持ちで受講しましたが、興味が尽きず、翌年の1997年に1万ドルを出費して、レベルⅢのコースも受けました。そこで出会ったのがHyrax、いわゆる上顎急速拡大装置、存在は知っていても使った事のない装置でした。
レベルⅢでは自分の症例だけでなく、他の多くの先生の症例の治療計画、治療経過を学ぶことができましたが、その中で「Hyraxを併用するとHead gearか3倍効く!」というフレ-ズを賀久先生の通訳で何度も聞きました。側方拡大装置というよりは、遠心移動装置の一部としてHyraxと出会いましたそれ以来、Hyraxと関わって四半世紀を超え、昨年2022年のマスター認証講演では、Hyraxを併用した早期矯正について私見を述べさせていただきました。いわゆるdental age ⅢBのタイミングで、HyraxとHead gearを併用して上顎大臼歯の遠心移動をすると未萌出の上顎3番歯胚の近心傾斜や近心転位が改善してくることを経験しています。
早期矯正中、最も大切で注意を要することのひとつが、永久歯への交換を安全に順調に進めることと考えます。特に上顎3番歯胚の近心傾斜や近心転位は、将来的に上顎2番の歯根吸収や2番3番の移転を起こす可能性があり、もし起こってしまうと、その後の治療が難しくなるだけでなく、気づかずに又は説明なしで放置していた場合、長年かけて培ってきた患者様や保護者様の信頼を失うことも有り得ます。
2022年のマスター認証講演では、失敗症例を含めて5~6例見ていただきましたが、今回はその中で一例だけ供覧させていただきます。
結論から言うと、この症例ではHyraxとHead gearの併用で改善を試みたのにも関わらず、右側3番は口腔外科に開窓を依頼し、牽引して改善する必要があった失敗症例ですが、左側3番は自然萌出した成功症例と言えます。この症例での右上3番と左上3番の何が違って、一方は埋伏し、他方は萌出したのかは検証していませんが、上顎3番歯胚の近心傾斜、近心転位の程度によっては、この症例の左上3番程度でも外科手術なしで萌出させ得る有効な手段だと考えています。
この研究会に参加させていただいて、20年以上経過しました。振り返ると、2002年AAOフィラデルフィア大会で、Joseph E Johnson Table Clinic Awardを当研究会が症例展示で、受賞しましたが、自分も1症例参加していたことにより、受賞者の一人にしていただく事が出来ました。
また、多くの先生と知り合うことができ、多くの事を学ばせていただき、本当にお世話になりました。自分が矯正専門で仕事ができているのも、非抜歯矯正研究会のおかげだと、感謝しています。
ただ、研究会でも多くの先生がアライナ-矯正に移行した中で、自分は相変わらずワイヤー矯正を続けています。Greenfield先生に教わったLip bumperやGMDもこの研究会の中でさえ、過去の物になった感は否めず、研究会に参加しても、以前ように自分の臨床に役立つ情報は減り、正直なところ、参加意欲は年々薄れています。
マスター会員にしていただいても、正会員の頃と大きく変わることはなく、他の会員の先生の役に立てることは特にないと思いますが、参加させていただいた際は、今後ともどうか宜しくお願い致します。
【上顎の叢生を主訴に近医より紹介、来院した10歳の女性】
初回の検査で上顎左右3番歯胚の重度の近心傾斜、近心転位を確認。
2013/6/8 初診時(10歳0カ月)女性の口腔内写真、オルソパントモ写真
2013/11/23 5カ月後 Hyrax セット 週1回の拡大開始、その1カ月後 Head gear 開始
2014/5/30 6カ月拡大(Head gear使用5カ月後)の口腔内写真、オルソパントモ、上顎左右Eの歯根が限界のため、翌月装置撤去
「98.5%Non-Extraction」や「過去20年間、外科処置を一切行わない非抜歯による治療率98.5%」等、少し前から怪しい数字だけが独り歩きしている感は否めないものの、症例集やパンフレットを見ると、臼歯関係がclassⅡだった症例が、小臼歯を抜かずにclassⅠになって治っている。
しかも初診時と歯列の形状が違っていて、丸くて何となく安定感があるような・・・
一体どんなことをしているのだろう。
4カ月後に開業を控えた自分には、3日間で25万円程のコースは、痛い出費でしたが、興味を抑えることができず、とりあえず、装置だけを学んで、使えそうもなければ、続けないつもりで受講しました。
初めて触ったLip bumperや初めて見たACCO、使ってはいたけど不得意なPalatal barの調整の仕方等々、軽い気持ちで受講しましたが、興味が尽きず、翌年の1997年に1万ドルを出費して、レベルⅢのコースも受けました。そこで出会ったのがHyrax、いわゆる上顎急速拡大装置、存在は知っていても使った事のない装置でした。
レベルⅢでは自分の症例だけでなく、他の多くの先生の症例の治療計画、治療経過を学ぶことができましたが、その中で「Hyraxを併用するとHead gearか3倍効く!」というフレ-ズを賀久先生の通訳で何度も聞きました。側方拡大装置というよりは、遠心移動装置の一部としてHyraxと出会いましたそれ以来、Hyraxと関わって四半世紀を超え、昨年2022年のマスター認証講演では、Hyraxを併用した早期矯正について私見を述べさせていただきました。いわゆるdental age ⅢBのタイミングで、HyraxとHead gearを併用して上顎大臼歯の遠心移動をすると未萌出の上顎3番歯胚の近心傾斜や近心転位が改善してくることを経験しています。
早期矯正中、最も大切で注意を要することのひとつが、永久歯への交換を安全に順調に進めることと考えます。特に上顎3番歯胚の近心傾斜や近心転位は、将来的に上顎2番の歯根吸収や2番3番の移転を起こす可能性があり、もし起こってしまうと、その後の治療が難しくなるだけでなく、気づかずに又は説明なしで放置していた場合、長年かけて培ってきた患者様や保護者様の信頼を失うことも有り得ます。
2022年のマスター認証講演では、失敗症例を含めて5~6例見ていただきましたが、今回はその中で一例だけ供覧させていただきます。
結論から言うと、この症例ではHyraxとHead gearの併用で改善を試みたのにも関わらず、右側3番は口腔外科に開窓を依頼し、牽引して改善する必要があった失敗症例ですが、左側3番は自然萌出した成功症例と言えます。この症例での右上3番と左上3番の何が違って、一方は埋伏し、他方は萌出したのかは検証していませんが、上顎3番歯胚の近心傾斜、近心転位の程度によっては、この症例の左上3番程度でも外科手術なしで萌出させ得る有効な手段だと考えています。
この研究会に参加させていただいて、20年以上経過しました。振り返ると、2002年AAOフィラデルフィア大会で、Joseph E Johnson Table Clinic Awardを当研究会が症例展示で、受賞しましたが、自分も1症例参加していたことにより、受賞者の一人にしていただく事が出来ました。
また、多くの先生と知り合うことができ、多くの事を学ばせていただき、本当にお世話になりました。自分が矯正専門で仕事ができているのも、非抜歯矯正研究会のおかげだと、感謝しています。
ただ、研究会でも多くの先生がアライナ-矯正に移行した中で、自分は相変わらずワイヤー矯正を続けています。Greenfield先生に教わったLip bumperやGMDもこの研究会の中でさえ、過去の物になった感は否めず、研究会に参加しても、以前ように自分の臨床に役立つ情報は減り、正直なところ、参加意欲は年々薄れています。
マスター会員にしていただいても、正会員の頃と大きく変わることはなく、他の会員の先生の役に立てることは特にないと思いますが、参加させていただいた際は、今後ともどうか宜しくお願い致します。
メロディ矯正歯科 森谷 聡
【上顎の叢生を主訴に近医より紹介、来院した10歳の女性】
初回の検査で上顎左右3番歯胚の重度の近心傾斜、近心転位を確認。
2014/9/5 Lingual arch セット時
2014/10/24 Lingual arch セット1カ月後のオルソパントモ