研究会ブログ

講演レポート2019.12.05

2019年マスター認証講演 〜山下道也先生(山下矯正歯科)

1998年 グリーンフィールド先生が日本に非抜歯矯正歯科を伝えてからすでに21年という月日が経過しました。非抜歯矯正治療は,有本先生、賀久先生、篠原先生の努力にもかかわらず、患者さん方にはいまだに単なる拡大治療と同等に認識されている場合が多くあります。
しかし、私にとってはMOOは矯正治療の宝の山です。MOOが非抜歯矯正治療を目的とした非抜歯ではなく、理論に基づいた治療をすることにより、結果として非抜歯に終わる、もちろん顎骨の発育の不足等、大臼歯が本来あるべき位置に戻っても、まだなお歯列が収まらない場合は抜歯も必要になる、という単なる拡大治療との大きな違いを知っているからです。
まずは大臼歯が基本的な位置に戻ることが必要で、それがかなったときに初めて本当の診断ができることを知っているからです。


初診相談においても、相談者から、他の矯正歯科医と言うことが全く違うとよく言われます。それは不正歯列の原因を理解し、どのような流れで今の現状があり、本来の形はどういうものであるかを知っており、さらに具体的な対策をカードとして持っていること等、全体の方向性を知った上での治療説明であるからです。
不正咬合がどこからきてどこへ向かっているのか、それは治療後の変化も方向も患者さんもがしっかりと理解できるごく普通の理論であるからです。単に不正咬合がそこにあり、ではこう移動させて繕いましょうということとは一線を隔しているからに他なりません。
虫歯治療において単純に充填してきた昔の歯科と同じ間違いを矯正歯科界はいまだに持っているからです。単純な拡大によるボーンハウジングからの逸脱のような悲しい結果はCADの中にはないのです。


3先生方により発展したMOOはまた更なる発展をしています。顎骨の大きさと協調した歯列は長期の安定性にも優れ、矯正歯科の世界が求める長期安定性という成果を十分に残していると思います。
終了して10年以上たった患者さんが見てほしいと来院されても叢生等の目立った変化もなく機能していることを見ると自分のCADへの転向は正しかったのだと嬉しく思います。
グリーンフィールド先生が講演会で紹介された内容はアライナー矯正の新たな流れに入りつつある現代も本質を失っていません。それどころか臼歯の整直はアライナー矯正の中にも生きてくるほど本質に最も近いものの一つとして生きていると感じています。


知ってみればごく当然であるはずのことが説くごとに耳新しいこととして矯正歯科医に受け止められるといういまだに古い体質を引きずった日本の矯正歯科界は、日本人の、一度システムとして作り上げられてしまったものをなかなか壊すことができない体質を如実に示しているように思います。
頭の中では理解しても自らをを刷新できない体質を改めないといけないと感じています。大先生が言ったからと鵜呑みにして間違った結果を出してしまうことは不幸なことです。
善意で行ったことが悲劇の結果をもたらすことは本当に悲劇です。今後もこのMOOの治療方針をさらに発展させていけたらと思います。


山下矯正歯科 山下道也